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デジタライズ・ミーへの習作

母さん、あなたは僕をとても愛してくれました。
あなたは愛情を込めて料理を毎日作ってくれました。加工食品や化学調味料を毛嫌いし、素材にこだわって有機野菜や安全な食材だけで僕を育ててくれました。
病にかかれば夜中でも僕をおぶって病院を何カ所も回ってくれました。
その正しい愛がどれだけ僕を苦しめたことでしょう。
いいえ、あなたは悪くありません。
だけど僕は、あなたの手作りの料理をおいしいねと言って平らげたその口で、トイレですべてを吐き戻していました。あなたは、あのすえた吐瀉物独特のにおいに気がつくことはありませんでした。

戸籍を書き換えて嘘の死亡届を出しました。あなたの知る娘はもうこの世にはいないのです。悲しませてごめんなさい。
だけど僕は幸せです。今の時代、人の手を介さないものだけを食べて生きていけるからです。
イオン飲料とブロック型のビスケット、ビタミンやミネラルの栄養補助食品、時々食べる冷凍加工食品、嗜好のためのチョコレートを少々。
僕の生命を維持するのに必要なのはこれだけです。
あなたの手編みのセーターも、名前を変えたときにすべて捨てました。
不必要な肉を削り、もう女ですらなくなることができました。

仕事は順調です。
今僕は、人の記憶に関わるプログラミングをしています。記憶を読み出して移植するところまでは実用化ができていて――母さんは詳しくないから知らないだろうけど、おもちゃ会社から売り出した、ペットの記憶を再現するソフトウェア。あれは僕が作ったものです。
そして今関わっているのは、記憶だけでなく、人の思考もコンピュータに移植する技術です。うまくいけばアインシュタインをデジタル技術で蘇らせることができるかもしれません。

僕はこの世に、肉体を背負って生きているのが自分で許せません。
もしも生き続けなければならないのなら、紙のように薄い肉体でいたい。限りなくこの世に存在する部分を減らしたいのです。血肉と骨でできた体は僕にとっては拷問です。それらはとても有機的で生々しすぎる。鼓動もぬくもりも嫌いです。僕はもっと殺(そ)がれていたい。

こんなことを話すのは初めてで、そして最後になると思います。
いいえ、このメールもきっと送信せずに捨ててしまうと思います。
僕は今のプロジェクトが片づいたら、再び名前を変えるでしょう。
僕は可能な限り、自分が生きていた痕跡を残していたくないのです。

親不孝な娘でごめんなさい。僕のことは忘れて生きてください。
僕は本当にあなたのことが少しも愛せませんでした。

26歳最後の夜に。

(署名)
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Author:ありょーしゃ
過労→希死念慮→自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)→当事者会を立ち上げる前に辞める→旦那の献身的な対応で私生活は問題なし。

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