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迷宮へのオマージュための習作

両の耳を縫い合わせる老婆がいた。
古びためがねの奥からのぞく目はとてもチャーミングで、てらいのないほほえみだった。

「耳を縫い合わせてどうするのですか」
私は山高帽を胸の前に置いて問う。
「見てくださる? この形。ほら、こうやって手のひらを広げると――」
切断面を縫い合わせた耳は老婆の手から飛び立ち、ひらひらと羽ばたいた。
「飛んでいきましたね」
「蝶の耳、と呼んでいるの」
耳の蝶、ではないらしい。くすくすと笑う老婆の首は細くやせて、筋が脈打った。
「捨てるのももったいないじゃない。こうやって飛んでいってね。色々な国の様々な人の言葉を聞くの」
「聞いても何も答えてくれないのでは? 耳はあっても、言葉を理解する頭も、心もないではありませんか」
「ただただ聞いてほしいときだってあるわよ。どこにも行き場のない言葉を、話を、ありのままに受け入れて、そしてどこにも貯蔵しない。話がどこにも回転せずに無に還る。すてきだと思わない?」
彼女はまるでいたずらっ子のように、楽しそうだった。
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Author:ありょーしゃ
過労→希死念慮→自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)→当事者会を立ち上げる前に辞める→旦那の献身的な対応で私生活は問題なし。

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